SCP-711(紹介)
―送信させてはならない―
悲しいことだが、命あるものには必ず寿命というものが存在する。
そこには一切の例外はなく、尽きる時期はあまりに唐突で正確に把握することは不可能だ。
だが、寿命が尽きるまでの時間を引き延ばし続けることは可能である。
適度な運動やバランスのとれた食事、安全な居住空間の構築などによって様々なリスクから身を守り、結果として生きることのできる時間を最大限引き延ばすこともできる。
それは人類全体という途方もない規模であっても変わらない―
SCP-711
オブジェクトクラス:Safe
SCP-711は、財団がある計画を元に製作した装置であり、極めて厳重に収容されている。
その収容方法は
・コンクリートに埋め込み、貴重品用保管庫に保管
・最低4つの予備施錠システムと武装した職員により管理
・いかなる状況においても操作が許可されない
・操作やその未遂には最も厳しく激しい手段で罰せられる
と、非常に厳重。中でも操作は決して許されないようだ。
SCP-711は装置であることは説明したがどんな装置なのか?についても触れる。
これはデータを一方向に送受信することができる装置だ。つまり送られてきたデータに返信することはできない。
SCP-711において、このデータの行き先が重要なポイントだ。
このデータの行き先、それは
過去である。
つまりSCP-711が受信するデータは未来のもの、ということになる。
現時点では17個のメッセージを受け取っており、一応全て財団が間違いなく送信したものである。
問題は17個目のデータであり、これはSCP-711が作られて10年の月日が経ってから検出されたもののようだ。
詳細は不明ではあるものの、どうやらこのデータは347文字の文字列からなり、最初の50文字は財団の職員によって送信されたことが確実に分かるものだったらしい。ちなみに送信日時は分かっておらず、現時点まで17個目のデータが送信されていないらしい。
過去へデータを送ることのできる装置。
それがSCP-711の正体だったのである。
さて、
なぜあそこまで収容方法が厳重なのか?
なぜ操作することをあそこまで禁止するのか?
そして、
なぜここまで17個目のデータに拘るのか?
と、少し疑問に思ったのではないだろうか。
過去にデータを送ることができるだけであって地球を木っ端微塵にしたり生態系を一気にぶっ壊せたりなどができるわけではない。
だが、財団としては決して17個目のデータを送信するわけにはいかないのだ。
なぜならば。
この17個目のデータこそ、財団と人類すべてが存続していることを保障しているからである。
17個目のデータの内容が重要なのではない、これそのものが送信されてきたことこそが何よりも重要なことなのである。
どういうことなのか?
このSCPは過去にしかデータを送信することはできない。
そして17個目のデータが送信された日時は未だに不明だが、少なくともいずれ訪れる未来で送信されることは確定している。
そして17個目のデータを送信するというその未来を限界まで先送りすることで、少なくとも財団の存続はほぼ確実に保証されることになる。
なぜあそこまで収容方法が厳重なのか?
それはSCP-711を決して操作させない為。
なぜ操作することをあそこまで禁止するのか?
それは決して17個目のデータを送信させない為。
なぜここまで17個目のデータに拘るのか?
それは送信されてしまえば財団、そして人類存続の保障を完全に失うことになってしまう為。
17個目のデータを送信を延期するためであれば、財団はいかなる対価でも支払うつもりだ。
だが、もし。
17個目のデータがされるような状況になってしまったら?
そんな状況下では財団は事実上存在していないだろう―
それが財団の見解だ。
最後に、この報告書に付けられたメモを引用して、この記事を締める。
SCP-711はある種の保険証書です。
我々は、文字列17が送信されるまではどんな危機に瀕しても生き残れると知っています—そうでなければ、文字列17はBLクラス予定説に矛盾します。
一度それが送信されてしまえば、もはや我々は保険を失います。
ええ、我々はいつかの時点で必ず失敗するでしょう:結局のところ、我々は文字列17を受信しているのですから。
しかし、我々はその送信を引き伸ばせば、それだけ長く生存し続けられることを知っています。
通信を止めてください、皆さん
——我々が存在していられるかは、そのことに依存しているのですから。
— P█████████████博士
SCP-711
逆説的な保険証書